膝を数回叩かれたが僕はじっとしその場を動かなかった。
昨日は違う公園のベンチで寝ていて。一昨日はだだっ広い広大なグリーンパークで寝た。
恐る恐るアイマスク代わりにしていたヘアバンドを取り、目を開けてみた。目の前にはランニングパンツにタンクトップ姿のおっちゃんがなにやら僕に話しかけている。
寝起きで朦朧としている僕はうまく返しが出来なく、会話が成り立たなかった。時計を見て時間を確認しうまくこの場を凌ごうとおっちゃんの話しに耳を傾けた。時間は0:00を超えていた。
おっちゃんはなにやらこう言っているらしい。
お前は日本人か?ここでなにしてる?寝てるのか?なんでここで寝てる?シンガポールの夜は危ないからホテルで寝なさい。お巡りさんもお巡りしてるから注意されるぞ。なんでここで寝てる?
全てに返答する力もないので、簡単な自己紹介とお金がないことを言って説明した。おっちゃんはとにかくあっちの方に安いホテルがたくさんあるからホテルに行きなさいと僕の肩に両手をのせ、顔を近づけて言ってくる。
寝起きでおっちゃんの顔が目の前にあるので、不機嫌な態度をとっていたらおっちゃんはそれを察して苦笑い。荷物も盗られるぞって荷物持ってジェスチャーしてくれたけど、僕はそれに対して触るんじゃねーよリアルトーンで言葉を発すると、おっちゃんは困った顔をしていた。
おっちゃんは親切に僕に言ってくれてるのに、僕はおっちゃんを困らせてしまった。悪いのは僕の方なのに、、
寂しそうにする素振りがないので、僕はわかったよ、ホテルに行くよと言って立ち上がり身支度を整えた。
すると、おっちゃんは$30ドルを徐ろに握って僕に手渡してくる。むしろ、ランニング中に$30持ってるなんてどれだけリッチなんだと思っていたが、汗だくなおっちゃんは優しい目をして僕を見る。
お金は貰えないと僕はおっちゃんに近づき、ありがとうと一礼してその場を立ち去った。
汗だくのおっちゃんとはやっぱりハグ出来なかった。
近くの自動販売機で1本$1.2のコーラを買いその場で一気飲み。後ろを振り返るとおっちゃんの姿は無かった。
薄暗くてはっきりと顔を覚えていないが次会う機会があればしっかりと感謝を伝えたい。
シンガポールの人は本当に優しい。無償の優しさと愛情を時々感じる事がある。おばあちゃんやおじいちゃんや子供や妊婦さんが電車に乗ってくるとすぐに席を立って譲ったり、たとえおじいちゃんやおばあちゃんが断ったとしても気まずい雰囲気が全くないのだ。その雰囲気を作り出すシンガポール人は純粋な優しさ人に与えている。
そんなシンガポールで安心し、野宿してる人なんてあまりいないであろう。
一か八かの野宿は人が近くたびにゾクゾクする。
それは動物達が本能的にもっている近づいてくる未確認なモノに対する殺気みたいなのを、僕は発しているのだろう。
この広い大地で自分の身は自分で守る他、手段はないから。
そうやって僕はこの世界で生きる術を身に付けているのであろう。
痛みを伴わない教訓には意義がない
人は何かの犠牲なしに、何かを得ることなどできないのだから
しかしそれを乗り越え自分のものにしたとき、、、、
人は何にも代えがたい鋼の心を手に入れるであろう
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