諦めたらそこで試合は終了ですよ〜後編〜

前回の続きです。

 

 

暗闇に消えた赤いテールランプを見送った僕は呆然とホームに立ち尽くした。

 

考え得るイメージを膨らます。考えるよりも足を踏み出していた。瞬間的にプラットホームNo.3を駆け抜けてホームの階段を上る。

 

プラットホームは全部で5まであり、プラットホームにはそれぞれ向かい合わせで電車のレールがあるのでそれを越えるには、プラットホームの階段を上り往き来するしかない。その階段は全部のプラットホームと繋がっているので、そこから往き来できる。日本の歩道橋みたいな感じだろう。

 

階段を上っている途中でプラットホームNo.1に「may I help you?」の文字を見つけた。僕はそこへ目掛けて一目散に走った。焦っても仕方がない事だがとにかく走った。がむしゃらに。とにかく「help me」を言いたかった。誰でもいいから僕の話しを聞いて欲しかった。

 

インドでロストバゲージ。

 

もう、それだけで最悪を想定しないといけない。なんて言ってもインドだから。

 

駅の一室に僕は飛び込んだ。そこは、相談室みたいになっていて困ってる人の話しを聞き、どこで相談したらいいか教えてくれるところだった。

 

コーラ買っていたら電車がいってしまった。そして、その電車には僕の荷物2つが残っている。助けて下さい。と僕は片言の英語で話した。

 

対応してくれたお姉さんは僕に笑顔で応えてくれた。

 

大丈夫よ。今、担当に電話掛けておくからあの階段を上って向かい側の担当の所に行ってと言われた。案内された通りに今度は歩いて向かう。コーラは飲み終わった。コーラはやはりうまい。

 

案内されたところにはおっちゃんが一人椅子に腰掛け、ただならぬ雰囲気を醸し出していた。明らかにむすっとしている。そのおっちゃんにさっきと同じように事情を説明した。おっちゃんはどこかに電話をかけて僕に一言言った。

 

お前の荷物はもう戻らない。どこに向かおうと思っていたんだい?そう僕に言ってきた。

 

聞き間違いだと思いなぜ戻ってこないか説明を求めた。その時はまだ僕も穏やかだ。しかし、帰って来た答えはさっきと一緒でもう戻ってこないと言われた。

 

僕は感情をむき出しにし、最善を尽くせと必死に伝えた。するとおっちゃんは戻ってこない理由を説明してきた。

 

理由はこうだ、ジェネラルシートはインド人がたくさんいるところだ。そこで、バックを忘れてしまっては誰かに盗られているよと言われた。ごもっともな意見で僕は少し考えた。

 

電車はエクスプレスで停車する駅は目的地まで数えるぐらいに少ない。その少ない駅で調べてもらえばバックは戻ってくるんではないかと。そう考えた。それしかバックパックを救う手は考えられなかった。

 

停車駅で調べてくださいと頼み込んだ。必死に伝えた。最初は渋った顔をしていたが僕がしつこく頼み込んだこともあって、各駅で調べてくれるように電話をかけてもらった。その時、正確に見つかるようにバックパックの位置を紙に書きバックパックの写真を見せて説明してもらった。そこまでしたらあとはインド人に賭けるしかなかった。

 

駅のホームで待つように指示をされ時間がかかると言ってきてた。電車はまだ次の駅に着いていないらしい。僕はこの隙にレストルームに行きシャワーを浴びた。

 

じっとしてられなかったのと汗を流したかったのだ。戻ってこなかったら戻ってこないなりに、なんとかやるしかないなと思いながらシャワーを浴び考えた結果。やっぱりバックパックが戻ってこないのはきついな、、と思いながら待合に戻る。足取りは明らかに重かった。

 

すると、こっちに来いと僕を呼んできた。とりあえずあの電車に乗って次の駅に行けと言われた。そこに止まっていかにも走り出しそうな電車にだ。訳がわからないまま、殴り書きの英語とヒンドゥー混じりの文字で書いたメモを渡された。僕は慌てて走り出し発車直近の電車に飛び乗った。

 

チケットも持っていない僕は怪しまれないように車掌さんを見つけて事情を説明し、先ほどのメモを見せた。すると車掌さんはベットを指差し3Aの席を僕に与えてくれた。神対応に驚きつつ席に座る。

 

隣にいたインド人にメモを見せて英語で説明してもらうと紙を見せた。と言うのも、車掌さんは全く英語がわからなかったので英語で説明してくれる人を探していたのだ。

 

隣にいたインド人が英語で説明してくれた。ロストバゲージした日本人を助けてくれ。そう書いてあるらしい。

 

長い文の割には淡白だと感じつつありがとうと言う。僕でもわかる。完全に訳し間違いだ。

 

とりあえず、次の駅に行くしかないようだ。若干というかたらい回しにされているとひしひしと感じていた。焦っても仕方がなく僕は2時間の睡眠をとった。

 

寝ているとあっという間に着いた次の駅。アファダバードと言うらしい。先ほどの駅よりも大きい。僕は駅の警察署に向かった。

 

奥まっている警察署はわかりにくかったが僕の前に先約がいた。僕は後ろから警察の対応を眺める。なにやらポケットに入れていた600/Rを寝ている間に盗まれていたらしい。警察は笑いながら調書をとって、そんな金額でここに来るなと言いそうなそぶりであしらっていた。

 

僕の予想では、600/Rなんて小さな額だし調査する必要がないと言ってその相談している男性を追い払っている。男性は600/Rで三日間暮らせると主張していた。警察は全く動かない。手だけで帰れとジェスチャーをしている。男性はこの場を後にした。

 

その光景を見つつ僕の番になった。僕は先ほどのメモを見せて事情を説明する。ちょうど英語を話せる警察官が対応してくれ僕の話に耳を傾ける。僕は心の中で半分諦めかけた。もう半分は僅かな希望に賭けていた。諦めたらそこで試合は終了だから。

 

電車の番号。時間。バックパックの場所。バックパックの色と特徴。写真を見せて説明した。すると、なんでここに来たと質問されたので、コーラ買った駅では対応しきれなく、あしらわれて終わりだったことを告げると、その駅に電話してかなりの傑僧で怒っていた。ここの警察署には偉い人がいたらしい。

 

僕はざまぁみろ思いながら。バックパックのことを思っていた。

 

調書を取り終わってから、停車駅全てのに連絡してくれた。意外と早い対応に驚いた。

 

待つ時間が長いらしく警察官はチャイやチャパティやカレーを用意してくれた。ちょうどお腹減った僕はチャパティにがっつく。それを見て警察官たちは僕にたくさんのご飯を分けてくれた。インド人の優しさと文化に触れた。

 

待っている間は僕のインド旅の話しやiPhoneを盗まれたこと、インドの好きなところを話して雑談。すると別室に呼ばれた。

 

なんと別室には僕のでかいバックパックが椅子の上に乗っていた。なんとこの駅で奇跡的に回収されていたらしく、僕の元に戻ってきた。めちゃくちゃ嬉しかったので、みんなとハグと握手で感謝を述べた。あとバックはもう一つ。わずかだった希望も胸が膨らむ。

 

バックパックが戻ってきてびっくりした。

 

先ほどの警察署に戻ると明日の朝にお前のバックは戻ってくると言われた。なんと、サブバックも僕の元に戻ってくる予定になった。戻ってくるまで安心はできないが、次の駅でサブバックを回収したらしく今日は電車がないので明日の朝一で戻ってくることになっているらしい。なんという奇跡。インドの警察も捨てたもんじゃない。

 

よかったなと声を掛けてくれる警察官たち。僕は少し安心した。

 

僕はまた別室に連れて行かれた。そこはベットが置いてあり、ここで朝まで寝ていいよと僕に言ってくれるのだ。至れり尽くせりの対応に僕は感激した。疲れていたのですぐさま、ベットで眠りについた。

 

 

足をこちょばされびっくりして起きた。先ほど対応してくれた警察官が僕のバックを抱えて大笑いしている。まさしく、彼が持っているカバンは僕のだ。

 

こうして奇跡的に、儚くも行ってしまった僕のバックパックは中身全て無事で帰ってきたのだ。まさかインドで荷物が戻ってくるなんて思ってもいなく、諦めかけていたのに諦めなくてよかったなと実感した。

 

何事にも当てはまる言葉ではないかもしれないが、諦めなければ報われるかもしれない。

 

しかし、今回の僕は単に運が良かっただけだ。

 

インド警察の対応に拍手を送りたい。

 

しかし、何も言わなかったら対応してくれない警察なので、動かすには多大なる労力を使うがそれもインドなのだろう。

 

バックパックが戻ってきたということは、先に進めと誰かが言っているのかもしれない。

 

僕の旅はまだまだ続きそうだ。

 

ありがとうみんな!