本当に失ったものは違うものだった。4

「WHY?」

 

とおっちゃんは言ってくる。その顔を見て俺はめっちゃ腹が立つ。むかつく顔をしているおっちゃん。何を言われてもむかつく。

 

グーグルで翻訳して伝えても僕の英語力では勝てないと思ったので、助っ人に電話することにした。日本人の友達に電話をかけて助けてもらうことにした。

 

地元が一緒の彼女は英語が堪能で信頼できる女性だ。起こったことをすべて彼女に話しておっちゃんに伝えてもらうことにした。僕は傍観しているだけだがおっちゃんは、彼女とのやりとりでアツくなっている模様。

 

そして彼女も何か言われたんだろう、おっちゃんをまくしたてるように話をしている。それもそのはず、僕の英語で知っているスラングを両者は連発しているのだ。普段は優しい彼女もおっちゃんの汚くなってくる言葉遣いに頭にきたのだろう。その迫力は電話を持っていない僕にも伝わってくる。

 

数十分くらい経ったであろうか、おっちゃんは僕に電話を渡してきた。彼女からどうだったと聞くと彼女の一声は

 

「こいつ頭おかしいよ」だった。

 

使いかけのリップクリーム盗むやつだから頭おかしいと思うが、紳士な対応をしてくれた彼女まで呆れさせたこいつは、ほんまにどうしよもない奴なんだろう。

 

もう一度言っておこう。

 

こいつは使いかけのリップクリームを盗んだのだ。しかも僕が指でほじくって最後まで使おうとしているやつをだ。

 

キモすぎるだろ。おい。

 

とりあえず三人で話しても進展しないので、レセプションの人たちを起こして話を聞いてもらうことにした。

 

話を聞いてもらうって言っても、ここのレセプションはフランス語をメインに話すので英語のレベルは僕と同じくらいだろう。それでもおっちゃんはレセプションの人たちにまくしたてるように話している。

 

この日本人の彼はファッキン　クレイジーボーイだとか、こいつは頭がおかしすぎる、もしかしたら殺されるかもしれない、僕はそれでナーバスになっている。

 

とか、なんやかんや言っている模様。ほんまにキモい。

 

レセプションと話しているおっちゃんの話しをイヤホンで拾い、彼女と一緒に聞きながら僕たちは呆れてきた。

 

こいつほんまに頭おかしいねって。

 

レセプションもこいつが頭おかしいことにすぐ気づいたのだろう。僕は部屋を移動させてもらい、とりあえず夜遅くなっていたので明日話しをしようとなり寝ることになった。

 

朝起きて、なんやかんや下から声がする。どうやら、おっちゃんは宿から追い出されるようだ。12:00までに荷物まとめて出て言ってくれと言われている。僕はその光景を見ながら心の中でケラケラ笑っていた。

 

｢ざまぁ」ってね。

 

おっちゃんは前払いで払っていたお金を返せと言っている模様。しかし、騒ぎを起こして迷惑をかけたのはお前だとレセプションに言われているようで、レセプションはお金は返さないと言っている。

 

「ざまぁ」。

 

おっちゃんは何言ってもレセプションは動じない。それから少し折れたのか少しお金を返せって言っている模様。ほんまにこいつはキモすぎる。それでもレセプションは動かない。

 

「ざまぁ」。

 

だけど、こいつの懐には僕から盗んだ5000円があるわけで、それを考えたら金銭的には損はしていないだろう。

 

「くっっっ」

 

めでたくおっちゃんは宿を出たのであった。

 

レセプションの人たちもお手上げだったようだけど、次の瞬間には笑い話になっている。

 

なんとも気持ち悪いおっちゃんだったわけだが、もう少ししっかりと荷物の管理をしなきゃといい教訓になりました。これは僕にも非があるなと思わせる事件でした。

 

（いやいや、違うだろ。使い終わって使いかけのリップクリームは盗まんやろ。ほんまにきしょい。）

 

 

 

地球にはいろんな人がいるみたいです。みなさんも今一度気をつけてみてください。

 

 

 

長々と失礼しました。

 

まだ、エッサウィラに滞在すると言っていたおっちゃんを街で見かけたら、話しかけてみようと思います。どんな対応してくるのか楽しみです。